教育施設インテリアデザインレイアウト事例集
学校法人佐藤栄学園 栄東中学・高等学校
生徒が主体的に学ぶアクティブ・ラーニング実践の場に

佐藤さん:
本校では「アクティブ・ラーニング」を教育の中心にすえ、生徒が主体的に活動できる環境づくりに取り組んでいます。また、校長は常々「“居甲斐(いがい)”のある学校でありたい」、つまり「授業だけでなく、行事や部活、休憩時間や放課後も含め、生徒にとって学校が居心地の良い場所でありたい」と話しています。
放課後に自主学習をする生徒が多いのですが、以前は無機質な自習室を使ったり、廊下の大きなホワイトボードで学び合ったりしていました。そこで食堂のリニューアルを機に、大学の図書館に併設されているような「ラーニング・コモンズ」機能を加える計画を立てました。昼時は食堂として使っているスペースを、放課後はラーニング・コモンズとして兼用する形です。「友達同士でリラックスできるカフェのように、おしゃれな雰囲気にしたい」と考えたときに、真っ先にイケアが思い浮かびました。
難題をプランニングで解決
必要座席数を確保し、食事と学習機能を両立
佐藤さん:
最大の課題は「食堂機能」と「ラーニング・コモンズ機能」の両立でした。
大学のラーニング・コモンズを参考にしましたが、食堂と兼用されている事例はほぼありません。また、食堂は座席を詰めて必要数を確保していたため、ラーニング・コモンズとしての余裕を持たせると席数が不足する状況でした。イケアのプランナーさんと打ち合わせを重ね、「食堂内のトイレを取り払って座席を増やす」という提案で両立が可能になりました。
IKEA for Business インテリアデザイナー・岡本宗大:
リニューアル前は「広さのある一般的な学生食堂」といった雰囲気でしたが、使われていないエリアがあり、せっかくの広さが活かされていないと感じました。
現代は“空間の水準”が高まっていて、中高生が普段利用するカフェもおしゃれ。それ以上の空間を目指し、さらに食堂とラーニング・コモンズの機能を両立させるという点が今回のチャレンジでした。食堂機能を維持する上で必要な座席数が明示されていたため、トイレを撤去したり、柱の前にテーブルを足したり、テーブルの向きを変えて椅子を増やしたりと、様々な工夫を行いました。今回は先生方とアイデアを出し合いながら進められた点も良かったと思います。たとえば「サッと食べたい人向けの、立ち食い蕎麦のようなカウンター」は、先生方との会話の中から生まれました。
気分に合わせて選べる空気感 — 3ゾーン1拠点
岡本:
ラーニング・コモンズも食堂も、使い分けできる方が便利ですから、生徒の過ごし方や学習形態を想定してゾーンごとに特徴を持たせました。先生方から「ここまで大人数のグループで使うことはないだろう」といったご意見を伺いながら、プランニングをブラッシュアップしていきました。
また、全体的にグリーンを多く取り入れました。オフィス空間のトレンドの一つに“緑化”が挙げられ、緑が目に入る「緑視率」が高まるとやすらぎを感じ、疲労感が和らぐといった心理効果が期待できるといわれています。人工観葉植物は手入れの手間がかからず、緑を多く取り入れた空間づくりに最適です。
Active Zone — 知的好奇心を刺激しあう場
Comfort Zone — 落ち着いたコワークの場
佐藤さん:
コンフォートゾーンは、木の質感が落ち着いた雰囲気を生み出し、少人数での利用に適しています。ローテーブルの座席は先生と生徒の面談にもちょうど良く、日常生活から友人関係の悩みごと、学習や進路などさまざまな内容の相談の場として活用されています。閉ざされた空間で先生と対面するよりも、こちらのスペースの方が本音で話し合えるようです。
岡本:
ローテーブルは座席数の確保という点からは効率が悪いのですが、使い分けを考え、リラックスして話せる席として設けました。
Quiet Zone — 個人の学びを深める場
佐藤さん:
クワイエットゾーンは、じっくり集中したい生徒が使っています。特に試験前になると人気の席です。こちらのテーブルはパソコンの使用を前提に選定していただきました。奥行きが深く、複数の教材を広げても余裕があって生徒からも好評です。
個人的には一段高くなった窓際の席が気に入っています。緑豊かな庭を眺めながら、気持ちよく過ごせる場所です。
岡本:
カウンターテーブルとしては奥行きが深めの商品を選定し、教材を広げるスペースを確保しました。このテーブルはシンプルなデザインかつ10色展開で、さまざまな雰囲気に合わせることができます。
中央に並んだ柱2本の周囲には図書館をイメージした棚をデザインし、テーブルで囲みました。フロア全体のアクセントになっていると思います。
Catch up Point — 人・情報と出会う場
佐藤さん:
キャッチアップポイントは教職員が生徒支援のために常駐するエリアで、学習支援や備品の貸し出し、体調不良時の対応などに利用しますが、イベントなどでも使い勝手が良いことが分かりました。このスペースで開催する入学相談会などでもここがそのまま受け付けになるので重宝しています。
教職員が交代で常駐するのですが、椅子の座り心地が良いため「職員室より仕事がはかどる」と好評です(笑)。
「この学校を選んでよかった」
生徒も保護者も満たされる、上質な空間デザイン
佐藤さん:
細部の装飾や観葉植物の取り入れ方もセンス抜群で、空間の雰囲気が格段に向上しました。席数や予算面などの条件を踏まえ、実際の使用を想定しながら必要な機能を残し、不要部分を思い切って省くことで、理想的なリニューアルとなりました。また、「IKEA for Business」は窓口が一本化されており進行がスムーズな点も良かったです。
保護者の皆さんにも好評で、文化祭での食堂開放時には「イケアのプランニングらしいよ」と興味を持っていただき、オープン前から100人以上の行列ができました。茶話会でこのスペースを使用した際も「この学校に通わせてよかった」「私自身がこんな学校に通いたかった」と口々に喜んでいただけました。
もちろん生徒にも大好評です。ゾーニングによって学習のスタイルが選べるので、一人で黙々と集中してもいいし、友達と教え合いながら自分の理解を深めてもいい。疲れたら休憩し、ときには世間話を交え、楽しみながら学べる場所になりました。
また、スペースの運営を生徒たち自身で担う形を取っており、勉強だけではなく、さまざまな角度から自主性を育む場としても機能しています。食堂としてもおしゃれな雰囲気がいいですね。以前は「ただ食べるだけの場所」として使われていましたが、今は「友達同士で楽しみながら食事をしている」と実感します。食堂を利用する教職員も増え、「ランチミーティング」を行うなど、交流の場になっているようです。
岡本:
イケアのデザインにご期待いただいたので、アクセントカラーを取り入れるなどの工夫を凝らして北欧を感じる空間に仕上げました。元の建物と調和を取りながらもイケアの世界観を伝え、空間全体としての快適さ、心地良さを生み出すことができたと思います。「使う方のクリエイティビティを引き出せる場所を提供したい」という思いを込めて取り組んだので、想像を超えた形で活用していただきとても嬉しく思います。
フレキシブルな空間が自主性を育み、人を呼び込む
リニューアルによって単にきれいになっただけでなく、新たな「質感」を持った空間に生まれ変わりました。生徒たちはいきいきと過ごし、教職員にもポジティブな変化がみられます。「勉強は黙ってやるべし」という意識がある教員も、生徒たちが笑い合って勉強する姿を見ることで、徐々に意識が変わってきたようです。
また、ラーニング・コモンズが「学びをテーマに集う空間」として注目されることで、主体的に学びたい生徒の入学につながることを期待しています。本校は「バリバリ勉強する学校」と誤解されることもありますが、実際は自由な校風でのびのびと学べる環境です。ラーニング・コモンズができたことで、本来の自由でのびやかな校風を伝えることができるのではないでしょうか。
今後は生徒たちから「ここでこういうことをやってみたい」といった提案が増えるといいですね。この空間から自由な発想が生まれ、より多くのことにチャレンジできるようになる。そんな期待を抱いています。
DATA
施設名・所在地:
学校法人佐藤栄学園 栄東中学・高等学校
〒337-0054 埼玉県さいたま市見沼区砂町2-77
導入年月:2024年12月
導入に要した期間:約1年6ヶ月
IKEA for Business を選んだ理由:デザイン、プランニング力
担当したイケアストア:IKEA渋谷
使用したイケアのサービス:ビジネスインテリアデザインサービス、配送サービス、組み立てサービス
※使用されている商品は記事掲載当時のものであり、販売が終了している商品が含まれる場合があります。