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教育・福祉施設デザイン事例集:城西国際大学

学生の新たな居場所を創出 自由に使える空間で、多様な視点を身に付ける

「あまり利用されていなかった食堂を、学生がゆっくり過ごせる“居場所”に変えたい」。このような考えから今回のリニューアルプロジェクトはスタートしました。プロジェクトを立ち上げた2022年から、2024年3月の完成まで、約2年間に及ぶリニューアルの軌跡と完成後の利用状況をご紹介します。

活用されていない食堂を学生の居場所に

城西国際大学 総務部・山本 志保さん

城西国際大学は千葉東金、東京紀尾井町、千葉安房と3つのキャンパスを構え、33か国200校を越える海外の大学と提携している国際色豊かな大学です。
今回食堂リニューアルに取り組んだ千葉東金キャンパスは、九十九里浜に近く、豊かな自然に満ちた環境。東京ドーム約4個分の広大な敷地には一般の方も利用できる美術館やバラ園、図書館などを備え、地域の文化拠点としての役割も担っています。

リニューアルした施設は第2学生食堂。2フロアにわたる広いスペースですが、新型コロナウイルスの影響もあり、十分に活用されていない状況が続いていました。今回のリニューアルに着手した経緯や完成後の活用状況などを、プロジェクトを担当した城西国際大学総務部総務課・山本 志保さんに伺いました。

「もともと学生たちからも『第2食堂の運営を再開してほしい』と多数の意見が寄せられており、職員の間でも課題として共有されていました。また、大学周辺には飲食店などが少なく、電車の本数も限られているため『学内でゆっくり過ごせる場所が必要ではないか』と考え、プロジェクトチームを立ち上げました。チームには学生にも参加してもらい、実際に利用する立場から率直な意見を出してもらいました」。

デザイン・プラン・価格 — 決め手は総合力

「実は、元々こんなに大がかりなリニューアルになる予定じゃなかったんです」。2022年の夏、床を張り替えて家具を入れ替えるイメージで検討を始め、イケアでプランニングを始めた山本さん。「ところが、『どうせやるならあそこも、ここも』となり、リニューアル規模が拡大し、プロジェクトチームのメンバーも増えたため、改めて3社にプランニングを依頼しました。3社のプランを比較し、家具のデザインの美しさ、プランニング力、そして価格を総合的に評価した上で、あらためて『イケアがベスト』と結論を出しました」。
リニューアルのコンセプトは「学生が集いたくなる場所づくり」。多様な学生のニーズに応え、毎日ワクワクできてコミュニケーションが活発化する空間を目指しました。
「本学は九十九里浜が近い立地ですから、海をイメージして欲しいことや、大学のカラーである青と赤をうまく取り入れて欲しいことを伝えました。また、イケアならではの色使いで、明るく開放的な雰囲気をつくって欲しかった。完成後のフロアを見たときに、私たちの理想や理念をしっかりカタチにしていただけたな、と感じています」。

2フロアで用途を切り替え、個人利用から大規模イベントまで対応

今回リニューアルした食堂は2フロアに分かれています。それぞれ大学カラーの赤と青でイメージを分け、学生メンバーがスペイン語でそれぞれ太陽と月を意味する「SOL Diner(ソル ダイナー)」「LUNA Café(ルナ カフェ)」と命名。各フロアの特徴をご紹介します。

大人数をスマートに収容 — SOL Diner(レストラン&イベントフロア)

「赤のフロア=SOL Diner」は多数のテーブルを備えています。普段は主にレストランとして活用されていますが、大人数でのイベント会場としての機能も担います。
このフロアで特に印象的な階段状のエリア。プロジェクターと合わせてパブリックビューイングなどでも使用できます。 「競技場の階段席みたいですよね。本学はスポーツにも力を入れていますから、競技の映像を投影してみんなで応援したり、集合写真を撮ったりできそうです。映画の上映会やコンサートを開いてもいいし、さまざまな使い道が考えられます」。
明るい窓際のソファ席。大きな窓1枚を挟んで屋外のテラス席へと空間がつながり、より開放的な雰囲気に。 ウッドデッキへと変貌を遂げたテラス席は気軽に座れるカフェのイメージ。時折、一般の方が休憩していく姿も見られます。

SOL Diner before/after

[全体]before
[全体]after
[通路側の窓際から]before
[通路側の窓際から]after
[テラス側の窓際から]before
[テラス側の窓際から]after
[テラス席]before
[テラス席]after

勉強やリラックスに — LUNA Café(カフェフロア)

「青のフロア=LUNA Café」はカフェ機能を担います。ビーチリゾートをイメージした爽やかな雰囲気と、さまざまな個性を持ったエリア分けが特徴です。
カラフルなロッキングチェアが並ぶエリアはリラックスしたいときに。「このチェアには一目惚れ。明るい海の雰囲気がイメージにぴったり」と山本さん。
カウンター席にはグリーンをあしらって集中できる雰囲気に。一人で黙々と勉強したいシーンで活用されています。カウンターはキッチンの天板部品を使用しました。
全体で1番人気があるのが、パーテーションで区切られたソファ席。「プライベート感があって安心できる」と好評です。広く高さのあるテーブルで勉強しやすく、電源も確保されています。少人数でくつろいだり、グループで盛り上がったりと用途はさまざま。海に浮かぶ雲をイメージした照明がフロア全体のアクセントになっています。

LUNA Café before/after

[窓際アームチェア周辺] before
[窓際アームチェア周辺] after
[フロア中央]before
[フロア中央]after
[通路側から 1 ]before
[通路側から 1 ]after
[通路側から 2 ]before
[通路側から 2 ]after

柔軟に活用できるエリア設定で大学祭の打ち合わせも、長時間の勉強も

取材当日もフロア全体がたくさんの学生で賑わっていました。勉強したり友人同士でランチを食べる以外にも、一人で音楽を聴いたり動画を見たりと、みなさん思い思いに活用されています。普段こちらを利用されている学生のお二人にリニューアル後の感想を伺いました。

薬学部2年生 小林 優希乃さん

「別の大学に来たのかな?」と思うぐらい変わって本当に驚きました。リニューアル前は少し暗い雰囲気でしたが、とても明るくなってインテリアの彩りも素敵!「VaLに行こう」という気持ちになりますし、大学にいる時間が長くなりました。
特に気に入っているのはLUNA Caféのソファ席。テーブルの高さが使いやすくて、友人たちと資料を広げてタブレットを並べ、おしゃべりしながら勉強しています。一人でのんびりすることもあるし、長いときは4〜5時間ここで過ごします。薬学部の学生は、テスト前は缶詰状態で勉強するんです。今までは自習室や空き教室を使っていましたが、次からここで勉強するのが楽しみです。

薬学部2年生 相原 陽向さん

大学祭の実行委員会に所属していて、打ち合わせでも利用しています。以前は空き教室などを使っていたのですが、ここで打ち合わせをするようになってからお互いに遠慮なく意見を言えるようになりました。フラットな席でメンバーの距離が近いし、空間が明るくて雰囲気がいいからでしょうか。
リラックスしたいときは、バニララテを買ってお気に入りのロッキングチェアへ。一人でのんびり過ごす時間が最高です。

学生が自ら集まりたくなる場所へ

「リニューアル後は色々な方から、『大学じゃないみたい』と褒めていただいています。実は、リニューアルの過程では『長時間食堂を開けていても、学生たちはそんなに利用しないんじゃないか。すぐ帰ってしまうんじゃないか』という意見もあったのですが…。実際にオープンしてみると大盛況」。
取材当日も、朝一番のオープンから夜のクローズまで学生で賑わっていました。山本さんも、当初の予想を大幅に超え、学生のみなさんが長時間活用していると話します。

この場を利用する学生の皆さんは、「イケアのところで集合ね」と話し合っているとか。「リニューアル前は、この場所が学生の集合場所になるなんて想像もつかなかった」と山本さん。
「このような場があると、普段交流がない学生同士が触れ合うきっかけになるし、授業だけではわからない一面を垣間見たりできますよね。さまざまな人とコミュニケーションを取って幅広い視点を身に付け、世界に羽ばたいて欲しい。大人になって大学時代を振り返ったときに、ここで過ごした時間はきっとキラキラ輝いているはず」。

『家具を提案するだけ』では終わらない、想いをカタチにするプランニング

「リニューアルを経て、学生たちが自ら集まりたくなる場所に生まれ変わった」と喜びを教えて下さった山本さん。さらに、IKEA for Businessのサービス内容が想像と異なり驚いたと言います。「当初は『イケアの家具をレイアウトするだけのサービス』だと思っていましたが、空間の使い方をトータルで提案してくれました」。今回は元々ある壁のペイント、床材や照明まで含めて、学生のみなさんが心地良く過ごせる空間を目指して取り組みました。
「プロジェクトが膨らんでいった時も、相談しながら柔軟に対応してくれましたし、私たちの意図や学生の要望を組み上げカタチにしてくれました。こんなことまで?と驚きの連続でした」。

IKEA Tokyo-Bay:法人営業担当 橋本 大輝

「初めてこちらを訪れたとき、本当に『いい場所だな』と感じました。高い天井と大きな窓を備え、さらに窓から見える緑も豊か。そこで、視界を遮っていた壁を取り払い、明るく開放感のあるフロアにすることを目指しました。また、長時間利用しやすいように、可能な限り各席に電源を備えています。イメージは、自宅のようにリラックスできる『第二のリビング』。実際に学生の皆さんがくつろいでいる様子を拝見しましたが、これからもどんどん自由に活用していただければ嬉しいです」。

リニューアルしたフロアは、各所からイベントでの利用申し込みが相次いでいるそうです。サークルなどのイベントはもちろんですが、今後は新入生や留学生の歓迎会も予定されています。また、お酒の飲み方講習会を行う際に、講習後にこちらをバーとして使って、交流しながら実際に正しい飲み方をレクチャーするのもいいですね。さまざまなシーンで使える場所ができたことで、多くのアイデアと人が集まるようになりました」と山本さん。

学生の皆さんに「より充実した学生生活を送って欲しい」と願う山本さんは、最後にこう話してくださいました。
「当初はイケアでこんなに多くのことが実現できるとは思っていませんでした。他の大学でもぜひ活用して欲しいですね。想像以上にいい空間ができあがって、学生の毎日が大きく変わりますよ」。


DATA

施設名:城西国際大学 千葉東金キャンパス
所在地:〒283-8555 千葉県東金市求名1番地
HP:https://www.jiu.ac.jp/
導入年月:2024年3月
導入に要した期間:約1年
IKEA for Business を選んだ理由:デザイン、コスト、プランニング力
担当したイケアストア:IKEA Tokyo-Bay、IKEA渋谷
使用したイケアのサービス:ビジネスインテリアデザインサービス、配送サービス、家具組立てサービス

※使用されている商品は記事掲載時期のもので、販売終了になっている商品が含まれる場合がありますのでご了承ください。