愛知県西尾市 総合福祉センター
「誰一人取り残さない」を実現する、新たな公共空間
誰もが心地よい「市民の居場所」をつくり出す
「誰一人取り残さない」――。愛知県西尾市は、その理念をイケアの空間づくりという形で実現しました。
市内で最も駅に近い公共施設でありながら、利用率が伸び悩んでいた西尾市総合福祉センター。西尾市は、市民の新たな居場所づくりを目的として、2026年3月末に1階ロビー みんなの居場所「ほわっと」と、3階 つながりルーム「らぽっと」(旧ボランティア相談室)をリニューアルしました。「役所らしくない公共空間」をコンセプトに、利用者一人ひとりの過ごし方を考え抜いた空間設計によって、誰もが安心できて、心地よく過ごせる居場所へと刷新。公共施設の新たな価値を官民連携により生み出した取り組みについて、西尾市役所の鈴木貴之さんにお話を伺いました。
※リニューアル後の1階ロビーの愛称を募集したところ、270名、500件を超える応募があり、選考の結果、みんなの居場所「ほわっと」に決まりました(2026年7月~)。
利用活性化が課題。北欧家具の魅力で新たな“市民の居場所”を生み出す
〈1階 みんなの居場所「ほわっと」〉
今回ご紹介する事例は、公共施設である西尾市総合福祉センターのリニューアル事業です。このプロジェクトでは、西尾市が2025年(4月~7月)に「西尾市総合福祉センターの新たな居場所づくりのためのリニューアル業務事業者選定」(プロポーザル方式)を実施し、イケア・ジャパンがパートナーとして選ばれました。リニューアル業務を担当したIKEA長久手は、フロアのプランニングを行い、700点を超える北欧系の家具、小物、雑貨などをセレクトしました。
また、西尾市とイケア・ジャパンは2025年11月、持続可能な地域共生社会の実現を図ることを目的とした包括連携協定を締結。当時、西尾市は、制度の狭間にある多様な困りごとに対応する「断らない」相談窓口「つながりの輪サポートステーション」(略称つなサポ)を、2026年4月に開設するための準備を進めていました。その「つなサポ」に対し、IKEA長久手は社会貢献活動「IKEA Family 子ども募金」の一環として、机や椅子などを寄付しました。
総合福祉センターは市内で最も駅に近い公共施設ですが、立地のよさに反して利用率の低さが課題でした。
1階ロビーは無機質な椅子とテーブルが並び、平日は少数の市民がテレビを観ているだけの利用が多く、どちらかと言うと暗い雰囲気で、もったいない状況でした。また、若者利用の少なさも課題のひとつでした。最近の中高生はカフェチェーン店などのパブリックスペースで自主学習をすることが多いため、2年前に学習スペースを用意したのですが、今の若者が好む空間とは程遠く、利用者は思ったようには増えませんでした。
3階については、市として大人のひきこもりの相談窓口である「らぽっと」の開設準備を進めていました。ここは、ひきこもり等の困難を抱える市民の皆さんが安心して自由に過ごし、社会につながるきっかけが得られる空間提案を求めました。
なお、今回のリニューアル全体の視点としては、SDGsの理念と同様に、「誰一人取り残さない」ことを大切にして、立場や年齢を問わずあらゆる市民が快適に利用できる居場所づくりを目標にしました。
インフォメーションゾーン
奥が見えるパーテーションを設置。興味を持って立ち止まり、「今日はどう過ごそうかな」と考えていただける場所に。
タイル壁面 くつろぎゾーン
コミュニケーションゾーン・親子ゾーン
グループスタディワーキングゾーン
社会とのつながりを見つけ、安心して自分らしく過ごせる場所へ
〈3階 つながりルームらぽっと〉
西尾市 鈴木さん:
西尾市では2026年4月に、市民の皆さんの多様な困りごとを受け止めてチームでサポートする「~すべての人のために~つながりの輪支えあい事業」をスタートしました。事業の基本理念は「誰一人取り残さない」こと。本事業の一環として、市役所での「つなサポ」開設と合わせて大人のひきこもり相談窓口をつくるため、総合福祉センター3階の「ボランティア相談室」をつながりルーム「らぽっと」としてリニューアル。「らぽっと」は相談支援だけではなく、開放的な1階ロビーの利用が難しいひきこもりの方が静かにくつろげる居場所として位置づけました。
「らぽっと」は南向きで日当たりがよく、カフェテラスのようないい雰囲気になりましたね。限られたスペースでも、的確なゾーニングのおかげで使いやすく安心して過ごせる空間に生まれ変わりました。今は少数ですが、ひきこもりの方が「らぽっと」に足を運び、有償ボランティアなどを通じて社会とのつながりを模索しています。
ウェルカムゾーン
スタディワーキングゾーン
一般的なオフィス環境に慣れることができるよう、デスクを対面に配置。社会とつながる機能を盛り込みつつ、元気が出るビタミンカラーを取り入れて、アットホームな空間に。
IKEA長久手 ヒューズ:
イケアでは、スタッフが自分の個性を生かしつつ互いの個性を尊重し、可能性を伸ばしていく「be yourself(自分らしさ)」を大切にしています。これは、つながりルーム「らぽっと」とも共通する理念ではないでしょうか。
自分の気持ちを表現することが難しい方も自分らしくいられる場所、そして、社会と家の中間となるクッションのような場所。さらに、支援する側も相手の個性を尊重し、社会も成長していく足がかりとなる「居場所」としてデザインしました。
IKEA長久手 佐藤:
布素材や角が丸く柔らかな雰囲気の家具を選んだり、ぬいぐるみを置いたりと、威圧感が出ないように工夫しています。北欧に明るい色の家具が多いのは、日照時間の短い冬を楽しく乗り切るためでもあります。パキッとしたビタミンカラーのアクセントで、少しでも明るい気持ちになってもらえたら嬉しいです。
新しい出会いと交流が生まれる場として
西尾市 鈴木さん:
リニューアルの目的のひとつであった、「公共施設らしさを脱却した空間」となり、明るく開放的でセンスのよい場所に生まれ変わりました。イケアならではの自然素材や温かみのあるデザイン、ポップなデザインの家具が公共施設のイメージを覆し、「令和の時代」にふさわしい新たな市民の居場所を生み出してくれたと感じています。
3階の「らぽっと」の本格稼働はこれからですが、1階ロビー「ほわっと」はかなり利用者が増えました。日中には親子連れの姿が見られますし、夕方は学生が多く、勉強に適した席が埋まることもあるほどです。
そして、1階ロビー「ほわっと」では可変性の高い家具を選定していただいたので、広いスペースでコンサートやワークショップを行うなど、さまざまな活用が考えられ、市民活動の促進にもつながるのではないでしょうか。スタートしたばかりですが、これからの利用可能性の広がりにワクワクしています。
「マジ最高!めっちゃイイ!」 利用者の声
●高校3年生女子2人組:
「マジ最高!めっちゃイイ!」
「これ(やわらかいパーテーションを指さして)、最高っすね」
「イケアがおしゃれ!」
●子ども(1歳程度)を連れた女性 「以前は4階のこどもひろばを利用してすぐに帰っていましたが、リニューアルしてからは、ロビーでもう一度遊んでから帰ります。1階喫茶店のランチをロビーで飲食できることも、すごくうれしいです」
●50代男性: 「資格取得の勉強でほぼ毎日来ています。みんなが集まれる場所を作ってくれて感謝しています」
●高校1年生男子: 「平日は毎日来ています。同じ高校生が多いので入りやすいと思いました。集中して勉強ができるのでありがたいです」
●80代男性: 「学生が増えてよかったと思います。ソファの座り心地がよいのでゆっくり休憩できます」
IKEA長久手 ヒューズ:
利用活性化の取り組みに「空間づくり」を大切に考え、イケアの価値観と共に受け入れてくださって嬉しく思います。西尾市の皆さんは、異なる文化を受け入れて寄り添う感覚があるのだと思います。すっかり西尾市の大ファンになってしまいました。
KEA長久手 佐藤:
西尾市の皆さんはとても温かく、手を取り合って共に取り組み、完成までたどり着きました。
西尾市 鈴木さん:
40年近く市役所職員として働いていますが、市民の皆さんからこんなにストレートな喜びの声を聞くのは初めてです。特に、若い高校生が楽しんで活用してくれているのが嬉しいですね。
イケアのプランは、単に西尾市の発注要件を満たして家具を選んで並べるだけではなく、利用者の「過ごし方」まで見据えています。さらに、ある程度プランニングが進んだ段階でも、現場の職員の声を取り入れ、きめ細かに調整しながら進めてくれました。また、数多くの製品から、ニーズに合った家具を選べることも大きなメリットですね。こうした点が、世代や立場の異なる市民にとっての居心地のよさや使いやすさとなり、利用活性化につながると考えています。
リニューアルは終わりましたが、西尾市とイケアとの包括連携協定に基づいたプロジェクトは動いています。例えば、IKEA長久手において外国にルーツをもつ子どもや若者たちの職場見学、市の特産品を販売するマルシェなど、様々な企画が準備されています。イケアが地域とのつながりを重視していることもあり、日本の地方自治体と、世界有数の大企業との一過性で終わらない継続的な関係性を構築できたと感じています。 行政機関の位置づけから、国や県よりも市町村の方が紛れもなく住民との距離が近いんです。だから、我々市町村職員は「直接住民の顔の見える関係の中で、少しでも満足していただける公共サービスを提供していきたい」という大きな責務を負っています。
今回は既存の公共空間に、民間であるイケアのノウハウ、ダイナミクスを大胆に採用したことで、市民の皆さんの公共に対する価値観の大きな「変化」を生みだしました。民間の連携パートナーであるイケアとの貴重な一期一会により、「誰一人取り残さない」という西尾市の大切な理念を、市民に一番近い場所で体現することができたと感じています。
障がい者等の家具組立支援を通じて「Togetherness」を体現
西尾市 鈴木さん:
包括連携協定に基づく障がい者就労支援として、イケアスタッフの優しいサポートの下、障がいのある方と施設管理職員等が協働し、2026年3月末の2日間、一部の家具や備品を組み立てました。障がいがあると、どうしても社会との関わりが薄れてしまう傾向にありますが、この組立支援は刺激的で実りのある体験となり、大変貴重な時間を持つことができました。
イケアスタッフの皆さんはどなたも若くとてもフレンドリーで、店舗で様々なお客様と接しているためか、障がいのある方もすぐに馴染むことができました。「教える」のではなく「共につくり上げる」という感覚で、一緒に汗をかいて、昼食を共にし、コミュニケーションを深めていただきました。そのおかげで参加者が本当に熱心に、そして楽しく、想定以上のスピード感で家具等を全集中で組み立てていた姿に感動しました。正直、現場では皆さんが手がけた家具に名前を刻んで残してほしいと真剣に思いましたね。
IKEA長久手 ヒューズ:
イケアのスタッフは、普段からお客さまに対してもスタッフ間でも、国籍やジェンダー、ハンディキャップの有無などを問わずに接しています。また、イケアスタッフの間で「Togetherness(連帯感)」という言葉がよく交わされますが、これは信頼し合って共に努力し、楽しみながら働くことを指します。この組み立て支援では、参加した皆さんと一緒に「Togetherness」を体現しながら、私たちスタッフにとっても学びの多い時間となりました。
DATA
企業名・所在地:西尾市 健康福祉部 福祉課
〒445-8501 愛知県西尾市寄住町下田22番地(西尾市役所会議棟1階)
導入年月:2026年
導入に要した期間:約10か月
担当したイケアストア:IKEA長久手
使用したイケアのサービス:ビジネスインテリアデザインサービス、配送サービス、家具組立てサービス
※使用されている商品は記事掲載当時のものであり、販売が終了している商品が含まれる場合があります。