LGBT+コミュニティは、インクルージョンギャップに直面しています。この現状を一緒に変えましょう。
LGBT+コミュニティでは多くの人々、とりわけ若い世代が、本質的なインクルージョンギャップに直面しています。私たちは彼らの話を聞き、理解していくことで、このギャップを埋めることができます。
では、よりインクルーシブな世界とはどのようなものなのか。若者たちが語った重要なメッセージに耳を傾け、学び、思いを共有しましょう。


ギャップに直面するとは?
イケアは、問題解決の一助になりたいと考えていますが、答えを見いだせていない問題があることも事実です。それなら、状況を把握している人に話を聞くのが一番なのでは?だからこそイケアは、未来を形作るうえで重要な役割を果たすLGBT+の若者が発言し、表に出ていく機会をつくっています。では、よりインクルーシブな世界とはどのようなものか、若者たちが語った重要なメッセージに耳を傾け、学び、思いを共有しましょう。

将来的には、企業がジェンダーや服装ではなく、私のスキルに注目するようになるでしょう。今はまだ、人々が私たちの声に耳を傾けてくれなくても、私たちの世代が変化をもたらします」
Prin(she/her)19歳
自身のアイデンティティをどのように表現しますか?
私にとっては、とても明確。私は男性から女性へのトランスジェンダーです。女性になりたいんです。
「インクルージョン」と聞いて何を思いますか?
私にとっては、かなり個人的なことです。今日の社会は以前よりもオープンになってはいますが、私はまだ、この社会に適合したいという気持ちがあります。たとえば、新しい学校に通い始めたとき、初めて会う人たちと話すのにとても緊張しました。自分がトランスジェンダーだということが頭から離れなかったのです。
どう感じていたのですか?
私がほかの人と違うから、嫌われると思いました。
居心地のよい場所はどこですか?
私は今、とてもラッキーなことに家族といるとくつろげます。私の家族はとても寛容になってくれたんです。でも、一番居心地がいいのは親友と一緒のときだと思います。彼女もトランスジェンダーで、彼女なら何でも話せます。彼女と一緒だと、しっくりくるんですよね。
自分が場違いとか、受け入れられていないと感じたことはありますか?
新しい仕事を始めた頃のことですが、「あなたは男性ですか? 女性ですか?」と聞かれたことがあります。そういうことがあると、とても不安になるし、とにかく傷つきます。これはかなり個人的な質問ですよね。私はその人のことを知りませんし、そういう質問に何と答えるべきか、そもそも答える必要があるのかわかりません。知らない人に近づいてプライベートな質問をするようなことは、私はしません。
周囲の人にどのように振る舞ってほしいですか?
もう少しオープンになって、私もあなたたちと同じ人間だということを受け入れ、理解してほしいと思います。私は少し恥ずかしがり屋ですが、オープンな面もあって、初対面の人と出会うのが好きです。お互いを知り、一緒にいて居心地のいい関係を築けたら、もっと私的なことも話せるようになるでしょう。
新たな仕事を始めたとして、あなたがそこに受け入れられていると感じる要因は何でしょうか?
私にとって自分のジェンダーは一番どうでもいいことだと理解してもらえたら、もっと安心できると思います。私はさまざまなスキルや知識、経験を備えた人間です。しかし、ほかの人と同じように、欠点や不安も抱えています。人々がもう少し批判的ではなく、単に自己紹介をしあえる雰囲気だったら、私は受け入れられているとより一層感じるでしょう。
あなたはまだ若いですが、将来のキャリアに関して、社会が障壁を高めていると感じますか?
私は、この社会は必ずよくなると信じています。私の世代が成長して社会に出たら、単純に私のような人が増えるわけですからね。将来的には、企業がジェンダーや服装ではなく、私のスキルに注目するようになるでしょう。私の世代がこの変化をもたらすのです。今、世間が私たちの意見を聞いてくれなくても、私たちがいなくなることはありません。これが、社会全体に受け入れられるきっかけになることを願っています。
学校を卒業したら何をしたいですか?
ストックホルムに引っ越すと思います。もっと大きな都市で暮らしてみたいとも思いますが、スウェーデンから離れたくないんです。私が7歳のときにタイから引っ越してきました。スウェーデンは偏見のない社会なので、安心して暮らせます。
あなたが社会の一員だともっと感じられる環境にするには、具体的に何をしたらいいと思いますか?
職場にも社会全般にも、性別を問わないトイレや更衣室が必要だと思います。男性更衣室は居心地が悪いので女性更衣室を使うのですが、着替えていると、「あなたはなぜここを使っているの?」といったような質問をされることがよくあります。こういう質問をされると、すごく緊張しますし、気分もよくありません。今は私に適した場所が本当にないんです。
あなたはまだ学生ですが、学校では受け入れられていると感じますか?
はい、感じます。私はルンドにある学校に通っているのですが、LGBT+コミュニティを積極的にサポートしている素晴らしい学校です。男か女かなんて聞く人は一切いません。まさに十人十色の学校なので。学校にいると、本当に気分がいいですね。私にふさわしい場所にいるって思えて、居心地抜群。

クィアコミュニティが持つ計り知れない可能性から目を背けないでください。私たちはここにいます。私たちはクィアです。そのことを受け入れてください」
Julius(they/them)23歳
自身のアイデンティティをどのように表現しますか?
私は「they/them」を好んで使いますが、性自認を持つ気はまったくありません。私のことを一言で表すとしても、性別はまったく重要でないと感じます。
もう少し詳しく話していただけますか?
私は自分をノンバイナリーだと認識していますが、人によって見方は異なります。ジェンダーを定規のようにとらえ、両端が男性と女性で、その中間を「ノンバイナリー」と見る人もいます。私は、むしろ男性、女性、ノンバイナリーを3点とした三角形のようにとらえています。つまり、ノンバイナリーは男女のどちらか、という枠組みには収まらないのです。
自分のアイデンティティを表現する方法がわからないということは、辛いですか?
ジェンダーに合わない接し方をされても、私は気にしません。ほとんどの人が私のことを男性と見ていることは理解していますし、個人的にはそれで問題ありません。ただし、これはあくまでも個人的見解で、ノンバイナリーの人すべてを代表した意見ではありません。
ジェンダーに対するこうした見方は、あなたにどんな影響を与えますか?
私は、出生時に割り当てられた男性というアイデンティティが、ある意味自分に合っていると感じています。でも、それがすべての人に当てはまるわけではありません。私にとってジェンダーは個人的なもの。自分の好きなようにアイデンティティを表現できるし、好きな自分になっていい。私にはこの考えが理にかなっていると思います。理にかなっていると思えないのは、地球上に暮らす80億人の人々が、対極にある2つのグループのみに振り分けられるべきという考えです。私には奇妙としか思えません。
自分自身を定義することについて、あなたはどのように感じていますか?
私には、「男らしさ」がとても抑圧的なことにように思えます。男らしくあるためには、目指すべき体型、恋愛や性的な関係を築いてよい相手、ふさわしい声などが決まってきます。 私はノンバイナリーなので、固定観念にとらわれる必要はないと思っています。自分らしくいられるのです。
「インクルージョン」と聞いて何を思いますか?
政治的な観点から、意思決定を行う人のダイバーシティ(多様性)なくして、真のインクルージョンは実現できないと考えています。裕福で強いコネを持つ上位中産階級出身の古いタイプの政治家は、多くの場合、貧困がどのようなものかを理解しておらず、貧困層に悪影響しか与えない政治的判断を行ってしまいます。ほとんど男性で構成された政府も同様です。女性よりも男性に有益な判断を下すのではないでしょうか。
つまり、ダイバーシティなくしてインクルージョンは実現しない?
これがとても重要なのです。さまざまな信念、文化的背景、性自認などを幅広く取り入れれば、より多くの情報に基づいて意思決定を行うことができます。それが重要なのです。具体的な例を挙げましょう。自分が認識する本当のジェンダーでパスポートを取得することが、非常に難しいのはなぜでしょう? ほとんどの国で不可能なのはなぜでしょうか?ノンバイナリーと記載されたパスポートはありませんよね?私は、ノンバイナリーの人が権力の座に就いていないことが原因だと思います。ノンバイナリーの人が権力の座に就けば、その重要さに気づき、どれほどの人がこの件で傷ついているのか理解できるでしょう。そうなれば状況は変わります。
居心地のよい場所はどこですか?
場所は関係ありません。私の周囲にいる人々の雰囲気によって、そこがわが家になるかどうかが決まります。創作に励んでいるときも、居心地がいいと感じます。ソーイングやジュエリーをつくっているときですね。
創造力はあなたにとって重要ですか?
はい、創造することが好きです。自分のジェンダー表現を常に創造し、進化させているとも感じます。たとえば、私はメイクをあまりしませんが、メイクの可能性を探求するのは好きです。私の男らしさを強調してくれるクロップトップを着るのも好きです。私の中にある独自の男らしさを探求できます。
あなたは、社会から疎外されていると感じることはありますか?
もちろん。よくあります。攻撃や暴行を受けたこともあります。私が人前に出るときに、大きめのダウンジャケットやパーカーを着る理由の一つでもあります。身の安全を確保するため、本当の自分を隠しているのです。
そのような経験は、あなたにどのような影響を与えていますか?
攻撃されたことで、真のインクルージョンにはまだほど遠いことがはっきりしました。私の服装や行動が変わっているというだけで、誰かが私を殺したいと思う。そんな現状って、おかしいですよね。クィアであることは、今でも、自分の権利や存在さえも常に議論の的になると意識しながら生きることを意味します。社会全体の見解では、まだ、ありのままの自分ではいられないのです。私が存在すべきかどうかも、ほかの人次第で、ときには政治的な問題になりかねないことに本当に失望しています。
執拗に崇拝されたことはありますか?
もちろんそれは別の問題ですが、迷惑なことがあります。グループは特定しませんが、そうですね、ゲイクラブにいるストレートの女の子たちとか……。ある女性から「私のゲイの親友になって、一緒に買い物に行かない?」って誘われたことがあります。どういうことかというと、2000年代初めに女性向け映画でストレートの男性が演じたゲイに憧れているだけなんです。私自身を見ているわけでなく、私が誰でもいいんです。本当に残念なことです。
ほかにも、同じような経験をしたことがありますか?
はい。ゲイというだけで、とてもプライベートな質問を気軽にしても構わないと思われることはよくあります。私は、他人の私生活のとても深い部分について、「シリアルにかけるのは牛乳? ヨーグルト?」のようなノリで尋ねたりしません。私のことを、生身の人間ではなく、ゲイというアイデンティティやセクシュアリティでしか見ていないから、このようなことが起こるのです。誰も、こんな風に扱われることを望みませんよね。
社会や人々の認識を変えるのに、こんなに時間がかかる理由は何だと思いますか?
難しい質問ですが、大きな問題の一つは個人主義だと思います。人は、自分とは異なる人と基本的に関わりません。オンラインでは特にそうです。アルゴリズムが、その人の閲覧に基づいて似たような情報をどんどん提供してきます。提供された情報によって、人は極端になってしまう。これは危険であり、現在、権力を握っている人々が理解できないことでもあります。
インクルージョンに関して、大企業へメッセージはありますか?まあ
そうですね、まず、ジェンダーをあまり特別視しないことから始めるといいかもしれません。たとえば、政党や企業が同性愛者やトランスジェンダーを雇用するのは素晴らしいことです。しかし、学校の先生がクラスに転校生をはりきって紹介するような、その人を目立たせる行為はいいやり方とは思えません。「変わった子が仲間に加わりました。こういうお友だちがクラスにいるって素晴らしいですよね」って感じにね。インクルージョンに関心があるのは確かだと思いますが、そこに思いやりや敬意がなければ、疎外感を感じることも、ばかげていると感じることもあります。できれば、こうした人々がジェンダーではなく、能力によって採用されてほしいですね。
ほかに、LGBT+の若い世代について知っておくべきと思うことはありますか?
職場をインクルーシブなものにしてから、クィアを雇用し始めるというのは無理だと思います。私はこのプロセスを、対象となる人々と一緒に進めるべきと思うのです。念のため申し上げておきます。現実として、私のような人々は大勢いるので、皆さんの会社や組織にもすぐに加わることになるでしょう。クィアコミュニティが持つ計り知れない能力と可能性を拒絶しないでください。私たちはここにいます。私たちはクィアです。そのことを受け入れてください
ほかに何か言いたいことはありますか?
ジェンダーについていろいろ話してきましたが、 最初にも言ったようにジェンダーはそれほど重要ではありません。あなたがあなたのパートナーと愛を育むように、私も私のパートナーと愛を育みます。私のすべてを理解しなくても、それは理解できるでしょう。このことさえ知っていれば、お互いを人間として尊重し、接することができるはずです。ジェンダーに関する議論を越えて、より差し迫った重要な問題へと取り組んでいきましょう。たとえば、地球を救うとかね!

Billieと一緒に学ぼう
チャットボット「Billie」が出すクイズにチャレンジして、LGBT+コミュニティについてより理解を深めてみましょう。
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本当の自分を見せることができませんでした。笑い方、話し方、歩き方。まるで、世界最長の映画で役を演じているようでした」
Georgii(he/him)26歳
自身のアイデンティティをどのように表現しますか?
私はゲイの男性です。あまり複雑ではありませんが、それでも人生のほとんどで言い出すことができませんでした。
居心地のよい場所はどこですか?
今は、職場のイケア店舗が居心地のいい場所ですね。仕事をしているとき、自分らしくいられると感じます。思いきり解放感を味わえます。
居心地がいいと感じるとき、どのような気持ちになりますか?
本当の自分を隠したり、本当の自分を知られるのを恐れたりする必要がないと気付いたとき、飛べるんじゃないかと思うほど心が軽くなります。
以前の日常はどんなだったか、具体的に教えてください。
学生時代はずっと本当の自分を見せることができませんでした。笑い方、話し方、歩き方。そういったことを全部隠していて、まるで世界最長の映画で役を演じているようでした。
自分を理解され、受け入れられたと感じたときのことを覚えていますか?
初めて働き出した頃、心温まる出来事がありました。その頃は年上の女性と一緒に働いていました。あるとき恋愛関係の話になって、パートナーがいると彼女が言っていました。ある日、真剣な話をする機会があって、そのとき彼女がパートナーは女性だと言ったのです。私にとって、それはとても驚きでした。本当の自分の生活を思い切って話してくれる人に初めて会ったのです。これをきっかけに私たちの間に強い絆が生まれました。彼女と一緒にいると、自分らしくいられると感じたのです。
あなたが社会の一員であると感じられるようにするために、私たちは社会の一員として何ができると思いますか?
誰もが、ほかの人の話に耳を傾け、振る舞い方に気を配れば、この世界はもっとよくなると信じています。具体的に言うと、言葉にもっと注意を払うべきです。たとえば、すべての男性にガールフレンドがいると思い込まず、「パートナー」という言葉を使うのです。また、人称表現に困ったら、相手に聞くようにするのもいいでしょう。こういったことは小さな行動ですが、社会のインクルージョンに大きな影響をもたらします。
現在の職場はいかがですか?
申し分ありません! パリ中心部にあるイケア店舗で働いていますが、ありのままの自分を受け入れられていると感じ、リラックスできます。イケアで働くことが好きなもう一つの理由は、プライドを尊重する会社だという点です。プライドシーズンの間だけではありません。インクルージョンとLGBT+の権利を擁護することがイケアカルチャーの一部なのです。だから、ここで働けることを心から誇りに思っています。
では、最後の質問です。あなたの今の夢は何ですか?
もっと落ち着いて暮らしたいとよく思います。立派な社会人になって、わが家と呼べる場所を見つけたいですね。有名になりたいわけでも、お金持ちになりたいわけでもありません。ただ、生きたいだけです。
LGBT+の人々の支援は家から始まる

お客さまから、悪態をつかれたり、傷つくようなことを言われたりしたことがあります。それでも私は無視します。私には、彼らが無知で意地悪に見えるし、怖がりかもしれないと思うからです」
Yanis(he/him) 24歳
自身のアイデンティティをどのように表現しますか?
簡単な質問ですね。私は男です。以上。
あなたにとってインクルージョンとは何ですか?
大切なのは、人は皆違うということを理解し、違いを受け入れることです。「違い」は資産であり、素晴らしいことだととらえられれば、私たちはもっと快適で革新的な世界で暮らせるだろうと思います。
居心地のよい場所はどこですか?
親しい友人と一緒にいると居心地がいいですね。わが家と思えるのは、両親がいる実家ではなく、自分のアパートです。そこではリラックスできて、安全だと感じます。
友人は、昔から知っている人たちですか?
はい。とても親しい友人に恵まれて幸せです。最初から一緒にいて、ありのままの私を受け入れてくれます。私は、両親と確執を抱えてきましたが、友人はずっと支えてくれました。友人たちは私が選んだ家族です。大好きな人たちです。友人たちがいなければ、私はここにいません。
話したくなければ、話さなくていいですが、家族とはどのような関係なのですか?
大丈夫です。話せます。私はパリ郊外で育ちました。アルジェリアをルーツとするイスラム教の家の出身です。両親は同性愛に対して非常に否定的な意見を持っていて、私は何年もの間、両親の意見を聞き、受け入れようと努めてきました。両親が求める自分になろうとしたのです。でも、私が18歳のとき、親友がレズビアンだとカミングアウトしました。彼女はとても強くて、「あなたもなりたい自分にならないとね。私はあなたの味方。ほかの友人も、あなたを全力でサポートするよ」と言ってくれました。
現在、両親とはどのような関係ですか?
複雑です。最近は、互いに話をするようにはなりましたが、私の生活やゲイだということは一切話していません。私が男性を好きだということは知っていますが、そのことには触れたくないようです。
本当の自分を隠す必要があると感じたときのことを具体的に覚えていますか?
はい、何度もありますから。両親と同居していた頃、夜、友達と出かけるときは、着たい服を両親に隠して持ち出し、友人の家で着替えていました。たとえば、ショートパンツなどです。両親が反対するとわかっているので。
話しておきたい記憶はほかにありますか?
若い頃、ハンドボールをしていました。試合は好きだったのですが、そのようなチームでは本当の自分を出すことができませんでした。本当の自分は絶対に誰にも見せないと、自分に言い聞かせていました。コートで自分のスキルだけを見せつけたかったのです。今思い返すと、ちょっと悲しくなります。そんな風に本当の自分を隠すのは決して気分のいいものではないので。
本当の自分になれると感じるのは、どんなときですか?
友人とのパーティー。誰に批判されることなく、自分のしたいことを、自分のしたいようにできる場所です。とにかく気楽で、自由で、幸せだと感じます。
あなたがもっと受け入れられていると感じられるようにするため、世間は何ができるでしょうか?
誰もが苦しんでいるということを知ってほしいです。知ることが重要なのは、知ることで人間は結束するからです。目の前にいる人を見て、判断せずに質問するよう努めれば、真の理解と共感を得ることができるでしょう。インクルージョンとは、まさにこのことなのです。
自分の将来のキャリアはどうなっていると思いますか? 本当の自分が理由で、周囲の社会が壁をつくっていると感じますか?
私の生い立ちから、本当の自分と、本当の自分を完全に隠した自分との切り替え方を学びました。 決していいこととは言えませんが、キャリアを築きたいと思うなら、適切な手段なのかもしれません。今はイケアで働いていますが、将来、別の会社で働きたいと思ったら、そのときは本当の自分を隠す必要があるかもしれません。
イケアでは自分らしく過ごせると感じますか?
私にとってイケアは、インクルージョンについて真剣に考えている職場です。自分らしくいられる職場だと感じます。誰もがそうとは言えませんが、少なくとも私はそう感じます。たとえば、レインボーカラーのキーストラップをいつも身に付けています。これは私にとって、とても重要なことです。お客さまからこの件について聞かれることがありますが、私は「イケアはインクルージョンを支持し、積極的に取り組んでいる会社です」と答えています。これができるから、ここで働けることを誇りに思います。
それは、あなたの感情にどのように作用しますか?
とにかく、本当の自分でいいと思えます。マネジャーも、私がありのままの自分で、自分の役割を果たせるようサポートしてくれます。私は、店舗でダイバーシティとインクルージョンに関するリーダーを務めているのです。私が職場で自分らしく振る舞うことが、手本になるはずと確信しています。私の店舗やフランスのほかのイケア店舗で働く人がありのままの自分を出しやすくなることを私は願っています。
仕事でネガティブな経験をしたことがありますか?
もちろんありますが、同僚からではなく、お客さまからです。お客さまから、悪態をつかれたり、傷つくようなことを言われたりしたことがあります。でも、何とかして無視します。私には、彼らが無知で意地悪に見えるし、怖がりかもしれないと思うからですそのような状況には関与せず、ただ立ち去るのみ。そして、影響を受けないようにします。そのような経験をしてもいい人も、気分を害したり傷ついたりしない人もいないのです。
インクルージョンを推進するために、イケアやその他の大企業へ具体的な提案はありますか?
はい。イケアの社内で自分の好きな人称表現を使えようになったらすばらしいですね。ほとんどの大企業でも同じだと思いますが、私たちも、イケアも、そして世界中の人々も、世の中には女性と男性だけではないと認識すべきです。自分を定義する方法は、他にもたくさんあるのです。
これは重要ですね。もう少し詳しく説明していただけますか?
人称表現を使い始めると、女性か男性かという二元的な固定観念に当てはまらない人が大勢いることを、誰もがもっと意識するようになるでしょう。代わりに、あなたが本当の自分になれるということも。メールの署名に文字をいくつか追加するなど、些細なことに思えるかもしれませんが、非常に大きな価値があり、重要なことです。イケアが私たちコワーカーに人称表現の使用をすすめたら、とても誇りに思います。これは、この世界に2つ以上の生き方がある事実を私たちが認識することになるからです。
私を含め、クィアの若者は、すべてを水に流せるような魔法のレインコートを持っていないのです。受け入れられていないと感じると、自尊心が損なわれます。自己評価が下がり、傷つくんです」
Yaël(they/them)25歳
自身のアイデンティティをどのように表現しますか?
私はノンバイナリーのトランスです。一般にトランスと聞くとバイナリーのトランスを思い浮かべると思うので、私はノンバイナリーと敢えて言うことにしました。あと、私はポリアモラスでもあります。つまり、一夫一妻制を実践していません。
もう少し詳しく説明してもらえますか?
ポリアモラスの実態は人によって異なります。私にとっては、パートナーが最優先でなく、人間関係に序列がありません。つまり、私の人生においては恋愛関係も恋愛関係以外の深い関係も同じくらい重要なのです。
例を挙げていただけませんか?
はい。たとえば、家族やパートナーが病気のとき、看病するために休暇を取るのは当然のことです。でも、親友が病気のとき、会社に「すみません、今日は出社できません。親友が病気なので家で仕事します」と言ったら、聞かれるはずです。「どうして?あなたに関係あることですか?あなたは母親じゃないでしょう?」って。確かに母親ではありません。でも、私の親友です。大好きな人です。だから、看病するんです。
あなたにとってインクルージョンとは何ですか?
私にとってインクルージョンとは、コミュニティ内で自分自身を位置付ける方法であり、自分の特権を他の人にも広げる方法です。特権は重要なのに、最近は、この言葉で攻撃されたと感じたり、恥をかかせるためにこの言葉が使われたと感じたりする人がいます。特権は道具です。人々が、自分の枠に収まらない視点が常に存在し、それが相対的にも絶対的にも同等の価値を持つと理解できるほどオープンになれたら、自分のさまざまな特権を活用して、周囲の人々を受け入れ、サポートできるでしょう。
どこで、どんなとき居心地がよいと感じますか?
いい質問ですね。インクルージョンには感情的な側面もあると思います。つまり、認められた、理解されたという感情。私はいろいろな側面を持っています。私のアイデンティティは私が決めます。その一方で、私はユダヤ人であり、移民であり、家族の中で初めて高等教育を受けた人です。私のことを見た目だけで判断するのではなく、話を聞いてくれたり、質問をしたり、会話しているとき、私は受け入れられていると感じます。
居心地がよいと感じる場所はありますか?
あります。私が住んでいるスウェーデンのマルメは素晴らしい街です。私が受け入れられていると感じる場所や、落ち着いて過ごせる場所がいくつかあります。たとえば、クィアカルチャーシーンの本屋「Page 28」。私はそこでボランティアをしています。ほかにも、WHOSE美術館、カフェのJesusbaren、クライミングジム、ローラースケートパークなどがあります。
あなたの住んでいる場所も居心地のよい場所ですか?
そう感じない人が多くいるのは確かですね。でも私は幸運なことに、親友数人と家をシェアしています。誰もが、外では大きな仕事や用事を抱えていますが、家に帰れば、ちょっと不機嫌になったり、疲れてソファになだれ込んだりできます。必要なら、互いにハグしたり、互いに夕食をつくりあったり、チップスをつまみながらボードゲームに没頭するのもいいですね。
私生活の中で、違和感や、本当の自分を隠す必要があると感じるのはどんなときですか?
私は保守的なユダヤ人コミュニティで育ちました。つまり、とても信仰深く、文化的なつながりの強いコミュニティの出身です。私は出生時に割り当てられた性別が女性だったので、女の子らしくないことするとき、さまざまな疑問が湧きました。
自分が人と違うという疑問だけではなく?
はい。少し成長して、人前での自己表現方法やアピール方法を探究し出したころ、自分を恥ずかしく思うことがたくさんありました。私の振舞いや、私が付き合うべき人について、周囲にはいろんな期待があったのです。私は今25歳ですが、クィアコミュニティに出逢い、「これが自分らしくいるってってこと?」と気づいたのは21歳のときでした。理解はされなくても、批判の代わりに親しみを込めた質問が返ってきたのです。「どういうこと? もっと話して」ってね。
あなたが本当の自分を自覚したとき、家族はどのように反応しましたか?
家族が理解してくれるまで3年かかりました。今は、私がどのように扱われたいのか、どのように見られ、話しかけられたいのかを理解しています。しかし、私が私自身を理解するのに25年かかったことも忘れてはいけません。自分のアイデンティティを伝えるために私が持つあらゆる知識を、家族はまだ持っていないのです。でも、家族は喜んで耳を傾け、理解しようとしてくれます。そして、ありったけの愛情を込めて努力してくれます。知ろうとすることは成長の一部であり、成長はいつでも必要なことです。
周囲にいる、LGBT+の若者ではない人たちに求めることは何ですか?
まず、たまに自分と異なる人々と話す機会をつくってほしいですね。何らかのコミュニティ活動に参加するとか?私たちは社会の分断を何とかする必要があります。そうすれば、それぞれの大切なコミュニティに大きなメリットがもたらされると確信しています。また、自分と同じ特権を共有していない人々の生活について知る努力をすれば、世の中はいい方向に進むと思います。
ということは、小さな行動が重要なのでしょうか?
はい、小さなことが大きな変化につながると私は信じています。私が特定の単語を使わない理由、私が男性用/女性用以外のトイレが必要と思う理由、ノンバイナリーがよく話題になる理由を聞いてくる人がいるかもしれません。私がこだわる理由を積極的に聞こうとし、理解しようと努力してもらえれば、そういった些細な行動が大きな意味を持つようになるかもしれないのです。
以前の職場ではどのような体験をしましたか?
私は技術系の会社で働いています。以前はいつも、男性ばかりの職場でクィアは私一人でした。居心地が悪いこともよくありました。私が私自身であることに違和感はありませんし、不安はないのですが、他の人が私をどのように認識し、その認識から私をどのように扱うのかわからないのです。
その仕事を辞めたんですよね?
はい。そういった経験の中で私は成長し、学んでいます。私は今25歳。私が伝えたいのは、「あなたのことを信じてくれる人に囲まれなさい」ということです。自分のコミュニティを見つけてください。あなた自身は自分への最高の贈り物なのです。
もう少し詳しく話していただけますか?
先ほど、就職の面接を受けてきました。半年前は、その仕事に自信を持って応募することができませんでした。ほかの人の認識に振り回されて、自分を制限していたからです。私は、人にどう思われるか気になります。私を含め、クィアの若者は、すべてを水に流せるような魔法のレインコートを持っていないのです。受け入れられていないと感じると、自尊心が損なわれます。自己評価が下がり、傷つくんです
新しい仕事に応募したとき、何を重要視しましたか?
優れた価値観と進歩的な姿勢を持つ会社であることです。私は、本当の自分を隠せないと自覚しました。私を人として受け入ることのできない人々だと感じたら、その場にはいたくありません。本当の私を理解しようとせず、尊重してくれない会社で、全力を尽くして働く必要なんてあるでしょうか?とは言え、職場や同僚を選べない人が大勢いることも分かっています。
イケアのような大企業にインクルージョンについて伝えたいことはありますか?
私が子どもの頃、クィアコミュニティはあまり認知されていませんでした。今は、認知度は高まっていますが、社会から疎外されているコミュニティに体系的で永続的な変化をもたらすための姿勢(採用プロセス、チームのダイバーシティ、学歴など)を打ち出している企業は多くありません。ピンクウォッシュやレインボーウォッシュは頻繁に発生しています。この点は重要視しなければなりません。
もう少し詳しく説明してもらえますか?
認知していることが行動に反映されることが大切なのですが、ダイバーシティのうわべしか認知されていないことが多いと思います。「認知」は会社のロゴに加えた「プライド」のレインボー、「姿勢」は、そこで年間を通して働く人々のダイバーシティと、それを支援し、反映するポリシーなのです。
大企業がインクルージョンをどのように改善できるか、具体的なアイデアはありますか?
人々の真のダイバーシティなくして、真のインクルージョンは実現しません。採用時に、応募者の優秀さだけでなくダイバーシティも重視する場合があると聞いたことがあります。ダイバーシティがイノベーションの鍵だから真剣に取り組むべきと考える企業なら、より多様なチームを構築する方法を考慮に入れる必要があるでしょう。人間は自分に何が欠けているか自覚できないことがよくあります。外部の専門家を採用すると、こうした盲点をカバーするのに役立ちます。 なるほど、よく分かりました。
このトピックに関してほかに何かありますか?
実現は容易でないこと、そして変化を先導している人々にはサポートが必要であることを忘れないでください。一人で取り組むことも、理解されていると感じられないことも辛いです。どんなサポートが必要かは、本人が一番よく知っています。
最後の質問です。最近学んだことはありますか?
自分自身を愛すること、自分を愛してくれてサポートしてくれる人を見つけることはとても重要です。それを学べば、残りの人生をあなたらしく生きることができます!自分の見られ方、自分の表現方法、愛する相手を探求するのは自分なのです。私にとって、社会的規範から逸脱することを学ぶのは大変なことでしたが、今は体のラインが出るようなワンピースもスーツも着ます。夏には、とても楽なので髪を切ったら注目されました。私はその見た目をとても気に入っています。私が学んだのは、なりたい自分に成長するということ。それは自由というすばらしい感覚を手に入れることです。
イケアはLGBT+ アライ(理解し支援する人)としてLGBT+のコワーカーや従業員をサポートしています
イケアは、すべての人を受け入れる職場環境をつくり、性的指向やジェンダーアイデンティティに関わらず、あらゆる人に平等な機会をもたらすことを目指しています。もっとも重要な活動に集中できるように、イケアは、あらゆる性的指向やジェンダーアイデンティティ(LGBT+)の人々の受け入れ促進に取り組む2つの組織、StonewallとWorkplace Prideに加わりました。
また、職場や地域社会におけるLGBT+の人々に対する差別への取組みに関する国連行動基準を共同で策定し承認しています。