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教育・福祉施設デザイン事例集:いろどりの丘

いろどりの丘(愉しみ、文化、教育、医療を含む複合施設)

癒しを感じ、人間本来の姿に戻れる場所

新しい道路に落ち着いたデザインの住宅が並び、「森の学校」がコンセプトの宮野森小学校や、JR仙石線野蒜駅の佇まいもいまだ新鮮な雰囲気を放つ町、宮城県東松市島市野蒜ヶ丘。2011年の東日本大震災で野蒜地区は、甚大な津波の被害を受けました。海沿いの平地から高台へと移転し「野蒜ヶ丘」として新たなスタートを切ったのが2018年8月。そんな町に2021年春、新しい風を吹き込む新施設がオープンしました。その名も『いろどりの丘』。コンセプトは「集い、愉しみ、健康になる。新たなライフスタイルの発信地」。レストラン・カフェ、お風呂や岩盤浴、ホテル、さまざまな用途に使える多目的ルーム、みんなで創る庭園のほか、クリニックや介護施設も一体となった複合施設です。その施設内の多くの空間がIKEA for Businessを利用しコーディネートされました。

総合プロデュースしたのは、医療法人社団KNI 北原国際病院の理事長で現役の脳神経外科医である北原茂実さん。“人を健康にすることすべてが医療”という考え方のもと、日本における医療の在り方を根本から見直し必要なシステムを模索、それを多くの方に新しい体験として提供し続ける北原先生が、震災10年目の復興地で新たにスタートさせる新施設について伺いました。

だれもが居場所を見つけられるように

エントランスを入り、雲がモチーフの照明をいくつもくぐると現れる吹き抜け空間。中央にはすくすくと背の高い木が天井へ葉を伸ばし、いかにも心地よさそう。いろどりの丘のシンボルとも言えるレストラン・カフェ空間「アトリウム」は、一体感のあるスペースの中に、さまざまな表情のスポットが存在する憩いの場です。

エントランスから「アトリウム」へと通じる空間。

窓際にはギャラリーをイメージした団らんの場。窓の外から見ても心惹かれるようアートのように照明を設置しながら、カントリー調のソファやカラフルなクッションの数々をレイアウト。スタイリッシュさとリラックス感が、絶妙なバランスでかみ合い独特の居心地の良さを生み出しています。

当初イスはあまり置かず床でごろごろできるような場所を考えていましたが、打ち合わせを進めるうち、この場所を使われるのは高齢者が多いこと、お茶をしながら長時間おしゃべりをするような利用シーンも見えてきたことから、現在のスタイルに落ち着いたと言います。

暖炉のあるこちらは床暖房も完備のごろ寝スペース。コーディネートのイメージは“ごちゃごちゃの一歩手前”。整えすぎず、ちょっと気分があがるセンスの良さを端々に。統一感よりもさまざまな個性を共存させることで、こちらもまたいろどりの丘ならではの居心地をしつらえています。

「この施設をつくろうと思ったときに、まず私が発想したのはパルテノン神殿なんです。それで1階の壁を大きなガラス面にしました。たとえば寒い冬の夜に外から見るとここに明かりがついていて、人が楽しそうにしている。大きなクリスマスツリーが飾ってあって、薪ストーブが燃えている。あそこに行ってお酒を飲みたい。あそこへ行って映画を見たい。そんな風に思ってもらえる空間をつくろうと考えこうなりました」と北原先生。

さまざまな表情を持つからこそ、誰もが気に入った居場所を見つけられる。自分が心地いいと感じる場所で過ごす時間は、健康のためにとても大切だと北原先生は言います。「病気を治すためには医療技術を取り入れる必要もありますが、それより重要なのが免疫力です。免疫力を上げるためには、ストレスを除去して自分の精神状態を健康に保つことが何より大切。このいろどりの丘で心地よく過ごし癒しを感じることで、人間のあるべき姿を体験してもらいたいと考えています」。

植物が人間にもたらす癒しの作用を重視し、施設内いたるところに緑が息づくいろどりの丘。吹き抜けの壁面には、管理の手間を考えて人工観葉植物を使用しています。しかし、これだけ大きな壁面を本物の植物のようにナチュラルに見せるのは至難の業。北原先生や、これまでも自分たちで運営するさまざまな施設に植物を導入してきた田村知一さん(医療法人社団KNI 北原国際病院 施設管理部部長)が先導し、数種の人工観葉植物を組み合わせて、限りなく自然の植物に近いニュアンスを再現しました。

レストラン・カフェ空間「アトリウム」ではオープン後、地元農家の朝採り野菜を使った料理や、新鮮なお肉お魚料理、オリジナル創作料理など、旬の素材を使ったメニューが提供される予定です。野蒜の人気のパン屋さんとのコラボレーションや、東京の人気メニューを取り入れることも検討中。さらには厨房を市民の方に貸し出し、1日店長として料理をふるまってもらうような使い方も構想中なのだとか。

癒しと楽しさが共存する空間が、滞在者の今を満たす

心地よく過ごしてストレスを減らし健康になる、そんないろどりの丘の魅力2つ目は、なんといってもお風呂と2種の岩盤浴です。お風呂には、おからだに不自由がある方にも利用しやすいよう寝湯も用意。東松島市初の岩盤浴は北原先生もお気に入り。からだを芯から温めて、免疫力の強化や新陳代謝の向上、自然治癒力を高めてくれます。今後は露天風呂もつくられる予定です。

竹素材のアイテムは、自然をふんだんに取り入れているインテリアにもよく似合う。

岩盤浴を利用した後にくつろぐ「レストルーム」には、水気に強いアウトドア用のゆったりとした大型チェアを設置。天井にはサステナブル素材として注目を集める竹材で作られたランプシェードをあしらい、さっぱりとした涼やかな表情の空間に仕上げました。

ダウン照明で落ち着いた雰囲気に。柔らかな光の丸形の照明は、北原先生のイメージにもマッチ。

さらに1階には誰でも自由に使える新しい交流の場「多目的ルーム」も。散歩の寄り道に、仕事や学校帰りに、レストランでのお食事の後に、いつでもふらっと訪れて、カーペットの上でごろごろ過ごせる自由空間。子どもから大人まで、幅広い利用者をカラフルなラグや大小さまざまな形のクッションが出迎えます。

映画観賞会や健康セミナー、参加型のイベントなど、その他の用途にあわせてチェアも設置。数種のデザインやカラーを組み合わせて、親しみやすい雰囲気に。地域のみなさんとアイデアを出し合い一緒につくりあげる豊かな交流の場となるようにとの思いを形にしました。この建物ができていくのを通学途中に見てきた宮野森小学校の子どもたちが、学校帰りに遊びに来ることもあるでしょう。地元の高校と課題解決型授業を行う構想もあり、まさに老若男女の集いの場になりそうです。

表情の違う5部屋が並ぶコンパクトなホテルスペースは2階に。

シングル2部屋、ダブル2部屋、二段ベッドを備えた4人部屋が1部屋、そのすべてがそれぞれに個性あるインテリアを備えていて、まるでイケアのショールームに宿泊しているような気分が味わえます。例えばご家族がいろどりの丘内の介護施設に入られている場合、付き添いのために宿泊するにも便利です。もちろん一般の方の利用も可能。

インテリアとあわせて壁色もイケアがコーディネートしており、さらに建築会社がそれぞれの部屋の壁色にあわせ同系色のドアを配置するなど、細部にまでこだわった、シンプルで美しいホテル空間に仕上がっています。

客室内に共通して設置されたカウンターテーブルは、キッチン用家具のMETOD/メトードを使用。洗面台とテーブルを一つにまとめることで、限られたスペースを有効活用し、カウンターテーブルの直線ラインが、モダンで洗練された雰囲気を作り出しています。

これからのクリニック、介護施設のすがた

“人を健康にすることすべてが医療”という北原先生の考え方をベースに、医療法人だけでは叶えられない複合施設を、NPO日本医療開発機構、医療法人社団KNI、株式会社KMSIの3つの組織が連携して運営しているいろどりの丘。施設内のクリニックと介護施設も、私たちが自然と思い浮かべるイメージとは、ひと味もふた味も違います。

『北原ライフサポートクリニック』は2012年から東松島市ひびき工業団地内で、医療をツールとしたまちづくりを実現するべく、外来診療や訪問リハビリテーションなどを提供してきました。2021年いろどりの丘に拠点を移し、再スタートします。人と人とのつながり、愉しい運動、美味しい食事、美しい自然などを処方することで、病気を遠ざける身体をつくることを目指す。そんなクリニックの思いが、オール木造のやさしい空間設計をはじめ、いろどりの丘全体に息づいているのです。

お誕生日会をイメージして配置した食器は、実際にも使われる。

こちらの「小規模多機能施設」は、「通い」「泊り」「訪問」の介護やケア、個別性の高いリハビリテーションなどのサービスを24時間365日利用できる介護施設。中央に共用の広々としたダイニングスペースとキッチンがあり、まわりに個室が並ぶシェアハウスのような間取りになっています。

ダイニングの天井には、イケア内で通称たまねぎと呼ばれるユニークな照明が明かりを灯し、空間に柔らかな表情を添えています。入居している方々が自然と大型テーブルに集まって、おしゃべりがはじまりそう。北欧のカントリーテイストがほっこりアットホームな空間を作り上げています。

入居者の生活の拠点となる空間のため、使い勝手のいいキッチンも完備。料理好きの北原先生にも高評価。
個室の壁色はスウェーデンのエッセンスを感じさせ、精神的にふーっと落ち着ける薄いブルーに。寝具の色合いなども全体的にシンプルにそろえ、リラックスできる雰囲気に仕上げました。

「私は理学療法士というリハビリの資格を持っているので、ここで使う家具に関しては私がイケアに行って、ご提案されるアイテムに関して、高さ、安定性、手すりや背もたれなど、すべてを確認しました」と亀田佳一さん(医療法人社団KNI 北原国際病院広報部広報責任者)。「イケアは費用対効果がとんでもなくいいです。このクオリティをあの価格で実現することは、イケア以外では考えられません。もともとおしゃれなものが多いですが、それをこんな風にコーディネートできるのがIKEA for Businessの強みだなと感じています」。

「最初にイケアにお願いしようと思ったのは私なんです」と北原先生。「それまではお店に行ったことがなかったのですが、IKEA立川に散歩に行ったときに、これだなと思ったんですよ。こんな居間がほしかったと思うようなアットホームな空間があって、センスがよく安心して使える食器やアイテムに囲まれて暮らす。そんな雰囲気が東北の人のセンスにもあうだろうなと直感しました」。

明確なビジョンを共有し、イケアのコーディネート力で答える

いろどりの丘の内覧会には、イケア担当プランナーの守重も参加しました。「このお仕事は、最初は北原理事長の思いを深く理解するところからはじまりました。お打合せをし、理事長の講話をお聞きしてビジョンを共有し、何度もプレゼンを重ねてお戻しいただく中で、重要なキーワードを抽出して私たちなりに咀嚼しイケアのコーディネートで答えをお出ししました。最終プレゼンでイケアの受注が決定した後は、信頼をいただけお任せいただくことができました。構想から2~3年の長期的な仕事でしたが、やりがいのあるプロジェクトに立ち上げ当初から携わらせていただき光栄です。いろどりの丘がめざす未来は、イケアのビジョンである“より快適な毎日をより多くの方に”と通じるものを感じています。」と守重。

表情あるイケアの照明が施設内のいたるところに灯る。入り口の雲形照明には色が変わる電球を使用。時間帯やイベントの雰囲気に合わせて色を調整できる楽しみも。

いろどりの丘ができてよかった、と北原先生。IKEA for Businessへの思いや、今後の展望も聞かせていただきました。「このような施設をつくる時や海外に病院を建てる時も同じですが、自分の頭の中にははじめから完成した姿が映像で見えているんです。どのような建物で、だれが働いていて、どんな風に機能しているか。そして、ここを訪れる人がどのような体験を得られるか、空間を総合的に考えています。それをどのように具現化するかがとても問題なのですが、イケアでなら一緒にカタチにしてくれると思いました。いろどりの丘はオープン後も植栽をしたり、畑をつくったり、地域の方とアイデアを出し合いながら、みんなで協力してひとつの空間を共創していきたいと考えています。そして地域の方や病院のスタッフ、より健康的な地域社会をつくるためにコラボしている企業の方々が訪れ、集い共に過ごしていく中で、健康と向き合う正しい精神を育てていきたいと考えています」

ここは、集まる人たちに癒しという魔法をかける舞台。北原先生のビジョンがまたひとつ現実のものになりました。そしてこの舞台は国内外から多くの医療従事者が見学に訪れ、新しい医療の在り方を体感するショールームとしても機能していきます。真の健康とは何か、幸せとは、健やかな人生を送るために、まずは訪れた人々が自分自身の心と向き合うための入り口になれるよう、いろどりの丘は今日もあたたかな光をたたえています。


DATA

会社名:いろどりの丘
所在地:〒981-0416 宮城県東松島市野蒜ケ丘2丁目25-1
HP:https://irodori.kitaharahosp.com/
導入年月:2021年3月
導入に要した期間:約2年
担当したイケアストア:IKEA for Business(渋谷)
使用したイケアのサービス:ビジネスインテリアデザインサービスおまかせ配送サービス家具組み立てサービス
IKEA for Businessを選んだ理由:イケアの商品の明るい色や洗練されたデザイン、専任スタッフによるアドバイス、小物までトータルコーディネートが可能

※使用されている商品は記事掲載時期のもので、販売終了になっている商品が含まれる場合がありますのでご了承ください。